[レポート] AWS を活用したライブ映像の収録およびスポーツイベントでの活用事例 #interbee
Inter BEE 2021 のセッション「AWS を活用したライブ映像の収録およびスポーツイベントでの活用事例」についてのレポートブログです。
こんにちは、大前です。
本エントリは、2021/11/17 - 11/19 で開催されている Inter BEE 2021 のセッション「AWS を活用したライブ映像の収録およびスポーツイベントでの活用事例」についてのレポートブログです。
セッション概要
昨今 スポーツイベントや音楽イベントなどの制作や配信、放送などの用途でもクラウドの活用が加速しています。そのようなワークロードでクラウドを活用するには、安定的にクラウド上に素材を保存していく仕組みが必要となります。本セッションでは、AWS 上にライブ映像を素材として収録するための方法論をご紹介した上で、東京 2020 オリンピック・パラリンピック大会における放送局の活用事例をご紹介します。
スピーカー
- 宮崎 剛 氏
- アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 シニアアカウントマネージャー
- 関 昭一 氏
- 株式会社 TBS テレビ メディアテクノロジー局 ステーション統括部
- 山田 幸太朗 氏
- 株式会社トラフィック・シム クラウド事業開発部 部長
レポート
- アジェンダ
- AWS を活用したライブ映像の収録方法
- お客様事例のご紹介
- おわりに
AWS を活用したライブ映像の収録方法
- 大きく 2 つパターンがある
- 1 つは AWS に映像を伝送した上でクラウドでファイル化、保存
- もう一つはオンプレ側でファイル化した上でクラウドに保存
- AWS に映像を伝送した上でクラウドでファイル化、保存 について
- AWS への取り込みは IP 信号で受け取る
- 冗長化やパケットロス体制への考慮が必要
- AWS 上のエンコード
- マネージドサービスを利用するパターンと、EC2 上で ffmpeg を動かすパターンが考えられる
- ストレージ
- S3 を利用いただくのが無難だが、用途によっては他サービスも
- ネットワーク経路
- イベント会場や拠点と DX や VPN でつなぐ
- 冗長化に対応したプロトコルを利用する必要がある
- Zixi, RIST, SRT など
- AWS では MediaConnect で受け取れる
- AWS への取り込みは IP 信号で受け取る
- オンプレ側でファイル化した上でクラウドに保存 について
- オンプレミス側で IP 信号等をファイル化したのち、AWS 側にアップロード
- 完全に出来上がったファイルを PUT する方法と、チャンク(順繰りにアップロード)を利用するパターンが考えられる
- ストレージとしては S3 が無難。他サービスでも可能
- オンプレミス側で IP 信号等をファイル化したのち、AWS 側にアップロード
- 各方法の特徴やお客様側で必要なコンポーネントについて
- AWS に映像を伝送した上でクラウドでファイル化、保存 する場合
- 現地の機材がへり、クラウドにどんどん収録できる
- 収録しつつ、ライブ配信もできる
- パケットロス体制の高いプロトコルに対応したエンコーダーが必要
- 回線の冗長化も必要
- AWS 側は MediaConnect や MediaLive, EC2 利用などが想定される
- オンプレ側でファイル化した上でクラウドに保存 する場合
- 拠点 * AWS 間の回線断への耐性が強い
- 完全に出来上がったファイルをアップロードするのであれば PUT 操作のみなので、専用な装置も不要
- チャンク式でアップロードする場合は対応した機材が必要
- AWS に映像を伝送した上でクラウドでファイル化、保存 する場合
- 映像素材の保存後の活用方法
- せっかくクラウドを使うのであれば、保存だけでなく、活用を考える
- ストレージの使い分け、アーカイブ利用
- パートナーへの素材共有
- クラウド上で編集
- AI/ML を組み合わせて人の作業を自動化
- クラウド上でプレイアウトシステムを用意し、配信まで実現
- 保存から配信までクラウドでできるのがクラウドを利用するメリット
- せっかくクラウドを使うのであれば、保存だけでなく、活用を考える
お客様事例について
TBS テレビ様
- 東京 2020 オリンピック・パラリンピックで利用した素材共有クラウドシステムについて
- 簡単にいうと、全自動録画機能を搭載したレコーダーをクラウドに構築したイメージ
- オリンピック・パラリンピックで配信される映像をクラウド上に保存して、放送局関係者に配布
- 簡単にいうと、全自動録画機能を搭載したレコーダーをクラウドに構築したイメージ
- オリンピック・パラリンピック検討課題について
- オリンピック
- 33 競技、48 回線
- パラリンピック
- 22 競技、24 回線
- 用語について
- OBS ... オリンピック放送機構
- JC ... ジャパンコンソーシアム、国内向けの放送共同連合体
- JBA ... 民法内の共通業務を行う組織
- VandA ... Video and Audio の略、回線の名称
- IPVandA ... IP 化されている VandA の事
- 日本の放送局は OBS からの映像を受け、利用する
- 通常のスポーツ配信
- 通常、キー局で素材を作成
- 系列局にキー局から素材を提供
- オリンピックの場合
- 基本的には同じで東京キー局で対応を行う
- 一方で、同時に行われる競技が多く、回線もたくさん
- 各系列局で、必要な映像が異なる
- オリンピック対応で人員も限られている
- 全選手をマークするのもほぼ不可能
- どうしたか
- キー局を介さずに各系列局が直接映像を取得することができないか
- 何が起こるかわからないため、全て録画し、使えるようにしておきたい
- クラウドに保存する映像について
- OBS が配信する OBS 回線が 48 回線、JC 回線が 8 回線の合計 56 回線
- パラリンピックは 24 回線
- クラウドで利用するには IP 化が必要
- IPVandA の信号を利用
- 信号をスイッチでまとめたのち、AWS にアップロード
- 経路には Direct Connect を利用
- 全国の放送局はインターネット経由で AWS にアクセス
- 配信スケジュール表について
- OBS の国際信号のスケジュール
- 色の違いで決勝とかがわかる
- JC の伝送予定表
- 新聞のテレビ欄に近いようなフォーマット
- 素材をダウンロードするにあたり、様々なメーカーを検討した
- JC の伝送予定表を再現できる、RecShareCLOUD を利用した
- 理由としては、今回の利用者は様々な職種が想定され、わかりやすい UI が求められたため
- オリンピック
トラフィック・シム様
- セッション対象
- 全ての放送事業者、SIer
- セッションのゴール
- RecShareCLOUD がなんとなくわかる
- 提案してみようかな?となる
- トラフィック・シムが好きになる!
- アジェンダ
- RecShareCLOUD の基本概念
- アーキテクチャ
- RecShareCLOUD 使い方
- 回線障害時の挙動
- おわり
- RecShareCLOUD の基本概念
- 様々な入力信号に対応
- 再生はプロキシビデオを利用するため、回線の節約も可能
- 必要なデータを AWS にアップロード
- アップロードされた素材に対しては Web 経由でアクセス
- 障害時には AWS 外のユニットが所持しているバッファでカバー
- RecShareCLOUD の利用用途
- 視聴の同録システム
- 視聴はプロキシで回線節約し、DL 時はオリジナル品質のファイルを取得
- ニュース用のハイライト切り出しシステム
- リアルタイム編集の素材
- 少し遅延はあるが、RecShareCLOUD 上でも編集可能
- パブリックビューイング用のストリーム
- スポーツ中継の配信など
- 別途ストリームを生成して S3 に配置することも可能
- 視聴の同録システム
- アーキテクチャ
- 主な構成
- EC2 を Web サービス
- Fargate を DL 処理で利用
- Amazon OSS は素材の検索用途で利用
- Athena 使用量の計算
- 動画データは S3 に保存
- ユーザは CloudFront へアクセスし、認証を行う
- ライブソリューションとしても利用いただける
- AWS を使うことで高い堅牢性などを持ちつつ、よりスピーディに展開できる
- 主な構成
- RecShareCLOUD の紹介
- UI がとてもわかりやすく、マニュアルなしでも操作できるほど
- 素材一覧にマウスオーバするとサムネイルが確認できる
- Web ブラウザがあれば利用できる
- クラウドだとスケールも簡単、自由度が高い部分がメリット
- RecShareCLOUD 実際の画面について
- (デモを交えて説明いただいたので、興味ある方はアーカイブをご覧ください)
- 大前の感想
- 本当に新聞の番組表をブラウザで見ているような感覚で非常に見やすいと思った
- マウスを乗せるだけでサクサクとサムネイルが出るので、欲しい素材を探しやすそうだった
- プレイヤーもシークなど操作感が良さそう
- ダウンロード操作もフォーマットやイン/アウトを直感的に指定できる、複数ファイルをまとめて落とすのもやりやすそう
- 再生・ダウンロード以外にも機能がある
- 直近再生の確認
- 番組名などで検索
- 管理機能
- ユーザ管理
- ユーザ毎に個別の権限を付与可能
- 管理者は各ユーザの RecShareCLOUD 利用量が確認可能
- ユーザ向けのお知らせを管理者から作成可能
- MP4 透かし
- DL 時に透かしを入れられる
- 回線障害時の挙動
- ハードウェア側に映像のバッファを持っているので、回線断が発生してもカバーできる
- 実際のワークロードにおける実績もある
(再) TBS テレビ様
- 運用実績
- 利用実績
- 全国 120 局がアクセス
- 尺は様々だが、総ダウンロード件数はオリンピックで 28000、パラリンピックで 5000
- 総ダウンロード容量は オリンピックパラリンピック合わせて 100TB
- 障害関連
- OBS の回線断
- 競技時間外だった為、影響なし
- AWS Direct Connect の回線断
- 素材の入手に時間はかかったが、無事に入手はできた
- 利用実績
- まとめ
- 運用者の声
- DL 時間を早くしたい
- プレビュー機能等は便利
- 今後も運用したい
- 予定していないアカウント増大が発生しアクセス数が増えても問題なかった
- 今後の課題
- バックアップ系統をどうするか
- SRT を利用してよりクラウドに寄せた構成
- クラウド上での編集対応
- 運用者の声
おわりに
AWS への映像の取り込みパターンを知った上で、直近のオリンピック・パラリンピックの裏側で利用されていたシステムについて聞くことができ、非常に面白かったです。
また、RecShareCLOUD はその高い使いやすさが伝わってきて、興味をそそられました。
以上、AWS 事業本部の大前でした。